課長は近くにあったコンビニの駐車場に入って車を止めた。

「すみません…何でもないんです…」

「気分でも悪くなったか?…あ、もしかして…落合が怖いか?すまない…俺が配慮していればよかった…」

「違います!」

「え?」

「違うんです…。体調が悪い訳でも熊が怖い訳でもありません」

「熊?」

「あ…あの…落合さんの事です…。私の心の中ではずっとそう…呼んでいたのでつい…」

「熊か!そりゃあいい!ピッタリの渾名だな!」

「笑いすぎです、課長…」

「ああ…悪い…久しぶりに受けた…。どうした?君の涙の理由は、他にあるのか?」

「はい…」

「言いにくい、事、か?」

いいえ。今すぐにでもあなたに言いたいです。

でも…それがもしあなたを困らせるのなら…

私は言えない。言ってはいけないと思う…。

「私は言いにくくはないです。でもそれを聞いたら課長が困るかもしれません…」

「え?俺が?なんで?」

はぁ…やっぱり全然気が付いていないわよね…。

もしかしたら気付いてくれてるかもなんて淡い期待がない訳じゃなかったのに。