「原因は俺にある。仕事にかまけて彼女に何もしてやれなかった。何を考えて何を悩み、何を嬉しく思うのか、気にかけてもやれなかった」

「それが原因で彼女は離れて行ったんですか?」

「…ああ…そうだな…。自分を最優先に考えてくれる男の元へとな」

なんですって?

男?

「え?まさか課長…」

「ずっと…浮気されてたんだ。気付かなかったよ、全くな…」

「そんな…」

「気付かないのは俺がそれだけ彼女に注意を向けてなかったからだ。彼女を責める事は出来なかった…。それに…結婚していた訳じゃなかったしな…」

そんなの…おかしい!

結婚という契約で結ばれていなくとも、不実には違いないでしょう!

「たとえ結婚していなくても立派な裏切り行為です!どんなに寂しくてもそれは絶対に許されないと思います!」

「ありがとう…、俺の為にそこまで怒ってくれて…。君は真面目だからそういう風に思うんだよ。彼女の友人や…中には俺の友人すらも…俺を責めたんだ」

「そんな人たちは本当の友人ではありません。課長の気持ちを汲んであげられないような人ならこちらから願い下げればいいんです」

「ズバッと一刀両断だな…」

「いけませんか…?」

「君の言う通りだ。彼女と別れてから、結局友人たちとも疎遠になった。所詮それだけの間柄だったんだ…」

「今でも…」

「ん?」

「今でもまだ…その彼女の事忘れられないんですか?忘れられないから…だからあのカップを後生大事にとってるんですか?」

「上杉くん…どうした?何故…泣いている…?」

課長に言われて私は自分が泣いていると気付いた。