心に沸き上がった疑問を一人で処理しきれなかった私は課長に問うた。

「そんなに…苦しい恋だったのですか…?」

「もう出過ぎた事しないんじゃなかったのか?」

辛辣な返答にたじろぐ。

「あっ!申し訳ありません!」

「ハハ…別にいい。ちょっとからかっただけだ」

本気で怒っていたのではないとわかり、少しだけ安堵する。

でも私の気持ちを振り回されているようで、課長を恨めしく思った。

「課長…からかわないで下さい…」

「これはこの間のお返しだ…。突然踏み込んで来た罰」

確かに唐突だった。

でも…

突然踏み込んで課長の気持ちを乱した事以外は…

後悔していない。

遅かれ早かれ私の気持ちの暴走は止められなかった。

いつなら良かったのか。
もう少し課長と私の関係が進んでからなら良かったのか。

だったらそれはいつ?

気持ちの流れには計画性なんて持たせられる筈もない。

だからあの時はああするしかなかった。

「それは…反省してるって言ってるじゃないですか…」

「そうか?反省してるようには見えないけどな?」

「意地悪言わないで下さい…」

「悪い!イジメるつもりじゃなかったんだ…。そうだな…もうそろそろ時効だろう…」

「え?」

「だから…前の彼女の話だ」

ああ… そうね…。
聞きたいけど聞きたくない…。

知りたいけど…知りたくない。