約束通り課長は落合の担当する店について来てくれた。

今から恐怖が待ち構えている筈なのに、課長の運転する車の助手席に座っているだけで心が凪いでいるのがわかる。

「今日もいるかな…」

ポツリと呟く課長。

「いますよ。多分」

「えらく断言するんだな」

「何故だか私が訪問する日には必ずいたので」

「そうか…。それじゃ覚悟した方がいいな」

「課長あの…」

「ん?」

ケンカは強いですか?って聞くのも何かヘンよね?

課長の事をもっともっと知りたいから聞きたい事も山ほどある。

だからといって唐突に質問をすれば課長の機嫌を損ねてしまうかもしれない…。

言いかけたまま続きの言葉を紡ぐ事が出来なかった。

「上杉くん?どうした?」

課長も不思議に思っているのだろう。
ケンカの話より、やはりこの前の無礼をお詫びしよう。

感情に任せて不躾だったかもしれないし…。

私の気持ちの僅か一端でも知って欲しかったからとはいえ、課長の気持ちを考えていなかった事は否めない。

「あの…この前は…すみませんでした…。課長のお気持ちも考えず出過ぎた事を申しました…」

課長は一瞬何の事かわかっていない様子だったがすぐに思い出してくれた。

「いや…後から考えたら君の言う通りだと思った。いつまでも引き摺っててもどうしようもないからな」

引き摺ってた?

それは…今もなお?