課長はとりあえずの所、自分が一緒に行って様子を見ると言ってくれた。

でも伊藤さんはどこか私の発言に納得行かなかったのか、部屋を出た私を追いかけてきた。

そして先ほどの発言の真意を尋ねてくる。

彼は私に色々とかまをかけて来たが。

本当に知りたいのは田辺さんと伊藤さんの事を私が知っているのかどうか。

その事しかない。

まわりくどい言い方でまどろっこしい事をやっている余裕なんてないの。

私は二人の事は承知していると、その経緯も合わせて説明した。

何故気付いたかという事も含めて。

この素直な若者は私の説明を感心した様子で聞いている。

そんなに感心するほどの事じゃないわよ…。

あなたを見ていればきっと誰にだってわかるわ。

でも彼のこの真摯な態度は私を少し安心させた。

人事部からの慣習がなかなか抜け切れず、営業部に移ってからも自分の殻に閉じ籠りがちな私だったけれど…

この素直な若者には少しくらい本心を曝け出してもいいのではないかと思った。