翌朝、僕はひんやりとした肌寒さで目を覚ました。
時計を見ると午前5時を少し回ったところで、空はまだ少し薄暗い。彼女の方を見てみると、まだ寝息をたてながら眠っている。
二度寝するにも時間がないので、とりあえずまた、昨日のコンビニに朝食を買いに行くことにした。彼女の携帯に、朝食を買ってくる旨の連絡と、一応、ローテーブルの上に置き手紙をしておく。

身支度をして外に出る。
都会の朝は少し肌寒く、そして薄暗く、それでいて、少しだけ神秘的な気がした。

コンビニで朝食と飲み物を買い、ホテルに戻ると、彼女はまだ寝ていた。
なんだかこの旅で、彼女との距離が一気に近くなった気がする。

ふと窓の外を見ると、昨晩、夜景を撮っていない事をとても後悔するほどの景色が広がっていた。大きな川に左右分断された大阪の町は、僕には未知感という面で、東京以上に大きく見えた。

少しの間眺めていると、

『おはよう。』

という声が聞こえて、彼女が起きてきた。

『おはよう。』
『よく眠ってたね。』
『君は何時に起きたの?』
『5時くらいだったと思う。』
『今何時?』

携帯を確認する。

『6時30分だね。』

彼女に一つ聞いておく。

『今日はどこに行くの?』
『まだ秘密。』
『決めてない訳じゃないんだよね?』
『そうだね。』
『正直、昨日よりも今日がメインだからね。』
『そうなんだ。』

『朝食買ってきておいた。』
『何があるの?』
『サンドウィッチかおにぎりが二つかな。』
『どれにする?』
『じゃあ、サンドウィッチ。』
『分かった。』

と言い、袋から取り出して彼女に渡す。
僕もおにぎりを取り出し、簡単に朝食を済ませた。

『チェックアウトは、何時なの?』

携帯に連絡が来ていないか確認しながら彼女に聞く。

『10時だって。』
『そこのパンフレットに書いてあった。』
『分かった。』

『何時に出るの?』
『8時には出たいかな。』
『なら、少しゆっくりしても大丈夫だね。』
『そうだね。』

僕らはそのあと少し雑談をして、
ホテルを後にした。

『どこに行くの?』
『とりあえず大阪駅だね。』

朝の大阪駅は、日曜日ということもあるのだろうが、予想していたほど、混雑はしていなかった。

『どこまで行くの?』
『神戸の板宿っていうところ。』
『目的は言いたくないんだよね?』
『うん。でも、ある。』

その言葉には、彼女の意思のようなものを感じた気がした。

新快速に乗り三宮駅で乗り換え、板宿駅に向かう。

電車の中での彼女は、少し緊張していたように見えた。
そしてそれは、まるで戦場に行く兵士のようだった。

そして今、僕は確信している。
彼女の中にある核心を、僕は覗き見ようとしている事を。