社長のイヤな予感は的中し恐れていた事態が少しずつ現実へと変わっていった―――

 数日が経ち、テナントの屋上に広がる日本庭園でたびたび行われる茶会に社長と鮫島が出席。
 春色の小花柄をあしらった仄かに灰色掛、淡いクリーム色の着物を着た鮫島は秘書の制服とはまた違う”大人の色気”を醸し出している。

 この茶会はVIP専用のため、イトカは出席が出来ない。

 しかし庭園の出入りは可能なため『茶菓子の味見は頼んだ』との社長命令により、いつでも食べらえるようにスタンバイしていた。
 そしてこの茶会に同じく出席していたのが金我だ。

 図体と態度の大きさは人一倍。扇子でパタパタ扇ぎながら、SPらしき男2人を引き連れている姿は組長のよう。
 庭園を背に始まった茶会は、暫し来客を楽しませた―――

「シバ社長、少しお時間を宜しいでしょうか」
「あぁ……わかった」

 茶会を主催している側に呼ばれ、席を離れた社長。
 残された鮫島は1人で庭を見つめている。

 このチャンスを金我は逃さなかった。

「鮫島秘書さん」

 不敵な笑みを浮かべ、彼女に声を掛けたのだ。