言い返すのも億劫で
相手にする気にもならず。


「そんな事より会議始まりますよ」


彼女の嫌味を無視した。

イトカの態度にムスッとした表情を浮かべた鮫島だったが
確かに会議の時間が差し迫っていて
言い合っている場合ではない事に自身も気が付いた。


今日は朝からVIPルームでの大切な会議。
もちろん秘書の鮫島も出席するため
事前の準備から忙しく動いていたのだ。


「急な用件以外は取り次ぐな。
 何かあれば鮫島に連絡しろ」


そう言って足早に出ていく社長と鮫島。

社長室に残されたイトカは
ふと思った。


「そう言われても…急かどうかって
 私にはその要件の判断はわかんないんだけど…」


『まぁなんとかなるか』と深くは考えず
痛む頭を誤魔化しつつ
いつものように頼まれていた仕事をこなした。



会議が始まって数時間。
時計もお昼に差し掛かっていた頃――


「やっと終わったぁぁぁぁ」


資料の入力をなんとか午前中に終わらせる事が出来
大きく伸びをしノートパソコンを閉じたところで。


コンコン―――


社長室の扉を誰かがノックした。