翌日から
見知らぬ世界で非日常的な生活が始まった。

対:金持ちを相手にしているせいか
飛び交う会話の内容はスケールが違い
金銭感覚が狂いそうになりながら
社長の絶対服従精神で仕事をこなした。


「遅い。
 それじゃ終わらないぞ」

「いや、無理でしょ…」

「文句は受け付けない」

「…はい」


社長室の床掃除1つも
分単位の時間刻みで決まっていて
それでなくても無駄に広すぎるのに無茶を言う。

秘書の鮫島は
言葉は発しないものの
常にバカにしたように見下し
継母のような睨みを利かせている。


コレじゃ本当にパワハラだ。

けれど前向きなイトカのヤル気は違った。
働くと言ってしまった以上
『やってやろうじゃん』の熱意が
パワーアップしていたのだ。


言われるがままに働き
ようやく掃除の終わりが見えてきた頃…


「おい、女」


ノートパソコンに目を向けたまま
文字を打ち込みながら
片手間にイチカを呼んだ。

”呼んだ”と言っていいものなのか疑問だが。


「その呼び方やめてくれません?
 一応ココの社員なんですよね?
 さすがに”女”は酷いですよ」


社長に対しての言い返しも
パワーアップしている。