「あっ、誕生日おめでとーございまーすっ、紀子サマ」

「紀子サマゆーな」

スタッフルームで顔を合わせるなり、三つ下の桜川(さくらがわ)麻衣(まい)ちゃんがニンマリ笑ってお祝いをくれる。

皇室の某プリンセスにあやかってお母さんが思い付いた名前は、あだ名にされたりからかわれたりとコミュニケーションツールのひとつ。おかげですぐに友達もできたし、これが狙いの親心だったかは不明だけど。

頼み事があるときや茶化すときには必ず『サマ』付けであたしを呼ぶ彼女。気の置けない間柄だからまあ許す!

「今日はお家でパーティだって言うから明日の夜、海鳴り亭ですからねー?」

「ありがと麻衣ちゃん。ガッツリおごってもらうねっ」

「大丈夫でーす、由里子さんっておサイフがあるんでー」