おお?匂わせ発言ーっ。チラ見した千秋さんの表情が明らかに曇った。おお!

「良い大人はもっと慎重でしょう。きぃちゃんは僕の命より大事な子なので、くれぐれも扱い方に注意してください」

「女の子の扱いは慣れてるし失敗したことないのが自慢かな、オレ」

なんか千秋さんがさらに無表情になってる?!

「慣れてるのが安心材料になるとは思えないけどね」

「初心者に初心者じゃ遭難するんじゃないかなー」

ハルトさんは軽く躱してクスリと笑う。「そろそろ出ていいか?」訊ねたのはあたしに。

「あ、はい!」

二度目の『行って来ます』を言うと、千秋さんは薄く笑みながら小さく手を振った。

背中でドアが閉まる音を聞きながら微かに息を吐く。心配よりヤキモチ妬いて欲しかったんだけどな。鉄より硬そうな呪いは一筋縄じゃいかない。自分の心臓も鍛え直さなきゃ。バッグを握る指に力を込めた。