キョトンとしてあたしを見返す千秋さん。

「・・・えぇとごめんね?よく聞こえなかった」

「名前で呼んでほしいんだけどダメ?『紀子(きこ)』って」

「えッ?・・・あっ、名前ね、名前、名前・・・」

ブツブツと、なんのおまじないかと思う。しかもなんでか焦っちゃって可愛すぎ!

「ノンちゃんて呼び方がキライなんじゃなくてね、子供っぽいから千秋さんに女に見てもらえないのかなーって!」

にこにこと満面の笑顔でハッキリと。

「ハイ、呼んでみて?千秋さん」

「いや、えぇと、ずいぶん急・・・だね?」

「そんなことないよー、かれこれ10年は待ったから」

にこにこにこ。

「呼んでみて?」

千秋さんの視線が宙を彷徨い、恐る恐るあたしに舞い戻る。

「・・・・・・・・・紀子、ちゃん」

「“ちゃん”ナシで」

「・・・・・・・・・紀子。・・・ちゃん」

おい!