ああ。そうか、そういう事か。太宰治はタイプスリップしたかったんだ。
「太宰さんは信じます?」
「さあ、解らないね」
「僕は信じますよ。現にこうやって令和の時代からやってきたんです。ああ、太宰さんに令和って言っても解らないでしょうね。昭和、平成、令和、時代は進むんです」
僕は饒舌になって、令和の時代の話をした。パソコンやスマートフォンの話を聞くと太宰治は驚いていた。

「行ってみたいなあ」

僕も早く元の時代に帰りたい。帰れるだろうか。

「君は男子の恰好をしているけれど綺麗な顔立ちをしているね。まるで少女みたいだ。心も繊細なんだろう。女性として生きてみるかい?」
太宰治は冗談めかして言ったが、僕はそうしてみようと思った。その方がこの昭和の時代では生きやすいに違いない。年齢も上手く誤魔化した。僕は女性として太宰治と生活をした。

そうして、それから数年後、僕と太宰治は令和の時代にタイムスリップする為、玉川上水に飛び込んだ。

「いやあ。君、凄いな。あれは現代の家かい?」
令和の時代の玉川上水から顔をだした太宰治は感嘆の声を漏らした。
良く見ると太宰治は年が若返ったように見えた。僕もタイプスリップした高校生の頃に戻っている。