「知っているのか。君、小説を読むんだね」
「ええ。少しですが。でも僕なんか小説のモデルになんかならないですよ。何の取り柄もない学生なんです」
「取り柄?取り柄とはなんだろうね。学生はね。取り柄なんかいらないんだ。生きているだけで輝いているのが十代の学生なんだよ」
僕は辟易した。太宰治はもっとこう、やる気のない人間で自殺の事ばかり考えている、心を病んだ人間だと思っていたからだ。今目の前にいる太宰治はやる気に満ち溢れているように思える。
こんな、前向きな人間がこの後心中なんてするのだろうか。
「僕はね書かなくてはいけないんだ。書いて皆にお詫びしなくてはいけないんだ。だから力を貸してくれたまえ。お礼はするよ。何がいい?」
「お礼なんていらないです。太宰さん、お詫びってなんですか?」
「僕が産まれてきたことについてだよ」
そう言うと太宰治は寂しそうに遠くを見た。
僕は良く解らなかったがウンと頷いた。そうして思い切って聞いてみた。
「人は生まれてきたら駄目な事なんてあるのでしょうか?」
「君は面白い事を言うね。キリスト教かい?」
「いえ、僕はどこの宗教にも入っていません。でも性善説とか性悪説については考えてしまうんです」
「君は人間は生まれながらに善の心を持っていると思っているのか?そんなのナンセンスだよ」
「いえ。その逆です」
途端に太宰治は悲しそうな顔になった。
「ええ。少しですが。でも僕なんか小説のモデルになんかならないですよ。何の取り柄もない学生なんです」
「取り柄?取り柄とはなんだろうね。学生はね。取り柄なんかいらないんだ。生きているだけで輝いているのが十代の学生なんだよ」
僕は辟易した。太宰治はもっとこう、やる気のない人間で自殺の事ばかり考えている、心を病んだ人間だと思っていたからだ。今目の前にいる太宰治はやる気に満ち溢れているように思える。
こんな、前向きな人間がこの後心中なんてするのだろうか。
「僕はね書かなくてはいけないんだ。書いて皆にお詫びしなくてはいけないんだ。だから力を貸してくれたまえ。お礼はするよ。何がいい?」
「お礼なんていらないです。太宰さん、お詫びってなんですか?」
「僕が産まれてきたことについてだよ」
そう言うと太宰治は寂しそうに遠くを見た。
僕は良く解らなかったがウンと頷いた。そうして思い切って聞いてみた。
「人は生まれてきたら駄目な事なんてあるのでしょうか?」
「君は面白い事を言うね。キリスト教かい?」
「いえ、僕はどこの宗教にも入っていません。でも性善説とか性悪説については考えてしまうんです」
「君は人間は生まれながらに善の心を持っていると思っているのか?そんなのナンセンスだよ」
「いえ。その逆です」
途端に太宰治は悲しそうな顔になった。