僕は太宰治と一緒に家に帰った。まだ昼間なので家には誰もいなかった。雨に濡れたので代わる代わるお風呂に入る。
そうしてパソコンをやったり、テレビを見せたりして過ごした。「凄いね。こんな時代だから小説なんか皆読まないだろう」
「いいえ。読みますよ。太宰さんの走れメロスなんか、教科書に載っているんです」
「あれが?あれは、僕は、「僕だって真面な小説が書けるんだ」とやけくそで書いたものだよ」
そうなのか。知らなかった。でも言われてみれば、そんな気もする。僕は人間失格とか斜陽の方が好きだ。
ふいに玄関のドアの開く音が聞こえる。母が帰ってきたのだろう。
帰ってきたって、気が向いた時、ハンバーガーやコンビニの弁当を買ってくるだけで、僕に変化がある事なんか気づく訳もない。
それでいいんだ。何も期待などしていないのだから。
「君、どうした?」
「何ですか?」
「複雑な表情をしていたよ。よし、君の小説を書こう。その為に僕はこの時代で働かなければいけない。これまでみたいに酔っぱらってばかりじゃいられないな」
「太宰さん」
「いいか。だから死にたいとか、消えてなくなりたいとか考えたらダメだ。そう思わせる人間が人間失格なんだ」
僕は何となく解った様な気がしてきた。
終わり
そうしてパソコンをやったり、テレビを見せたりして過ごした。「凄いね。こんな時代だから小説なんか皆読まないだろう」
「いいえ。読みますよ。太宰さんの走れメロスなんか、教科書に載っているんです」
「あれが?あれは、僕は、「僕だって真面な小説が書けるんだ」とやけくそで書いたものだよ」
そうなのか。知らなかった。でも言われてみれば、そんな気もする。僕は人間失格とか斜陽の方が好きだ。
ふいに玄関のドアの開く音が聞こえる。母が帰ってきたのだろう。
帰ってきたって、気が向いた時、ハンバーガーやコンビニの弁当を買ってくるだけで、僕に変化がある事なんか気づく訳もない。
それでいいんだ。何も期待などしていないのだから。
「君、どうした?」
「何ですか?」
「複雑な表情をしていたよ。よし、君の小説を書こう。その為に僕はこの時代で働かなければいけない。これまでみたいに酔っぱらってばかりじゃいられないな」
「太宰さん」
「いいか。だから死にたいとか、消えてなくなりたいとか考えたらダメだ。そう思わせる人間が人間失格なんだ」
僕は何となく解った様な気がしてきた。
終わり