(旧)同居人の一輝くんは、ちょっぴり不器用でちょっぴり危険⁉




 一輝くん……。


 なんで……。


 なんで一輝くん……。


 どうして私の言うことを信じてくれないの……。


 ……‼


 ……あれ……?


 なんで……。


 なんで私……。


 こんな……。


 涙が……。





「結菜ちゃん……⁉」


 私の涙に気付いた一輝くんがボタンをはずしていた手を止めた。


「どうして……泣いてるの……?」


 少し戸惑いながら、そう訊いた一輝くん。


 どうして……?


 どうしてだろう……。


 たぶん……。


 悲しかったから……。


 一輝くんに信じてもらえなかったことが……。





「……ずるいよ、結菜ちゃん……そんなに泣かれたら、僕は何もできなくなってしまう」


 少し困った顔をしていた一輝くん。


「……ごめん……結菜ちゃん……僕、少し強引過ぎた……」


 一輝くん……。


「ちょっと不安になっちゃって……ダメだな……僕」


 一輝くんの表情は少し元気がなかった。





「一輝くんはダメなんかじゃないよ」


 私が軽率なところがあったから。


 一輝くんに気持ちを打ち明けられて、一輝くんの気持ちを知っているのに……。


 いくら高校一年生の頃からの友達だからといって、拓生くんと二人で会って、おまけに家にまで……。


 たぶん一輝くんは、私が拓生くんの家に入っていったところは見ていないかもしれないけれど、そういう問題ではない。


 私は一輝くんに、まだ自分の気持ちの答えを出していないのに、他の男の子と会ってはいけなかった。


 私は一輝くんに失礼なことをしてしまった。





 ……‼


 そうだ。


 私は結果的に、もう一つ失礼なことをしてしまうことになってしまった。


 拓生くん……。


 私は拓生くんに気持ちを打ち明けられた。


 私は、これから拓生くんにも、どのように接すればいいのか……。


 ……どうしよう……。


 拓生くんに気持ちを打ち明けられたことは一輝くんには絶対に言えないし、バレてはいけない。


 もし一輝くんにバレたら……。


 いろいろ考えていたら、私は一輝くんと拓生くんに申し訳ない気持ちになった。







「ごめんね、一輝くん」


 私は自然に一輝くんに謝っていた。


「なんで結菜ちゃんが謝るの?」


「私も悪いところがあったから」


「そんなことないよ、結菜ちゃんは全然悪くない」


 一輝くん……。


 本当に優しいな、一輝くんは。


「だけど私は一輝くんのことを不安にさせてしまった。だから……」


 私は一輝くんに不安な気持ちになってほしくないし、悲しい気持ちにもなってほしくない。


 一輝くんには、いつも笑顔でいてほしいから……。





「ありがとう、結菜ちゃん」


 一輝くん……。


 一輝くんはそう言って、私の頬に伝う涙を指で拭ってくれた。


 そして、そのあと一輝くんの唇が私の唇に重なった。


 今度は、さっきのように激しくて荒いキスではなく、心のこもった一輝くんのやさしさを感じるキス……。


 ……心地良い……。


 一輝くんのやさしいキス……。


 とろけるような甘いキス。


 私は一輝くんのそんな甘いキスに溺れていた……。






 会っちゃった‼







 ある日の休日。



 今日は彩月と遊びに行っていた。


 そして彩月と別れた帰り道。


 私は家に帰る前に、ちょっとコンビニに寄って行こうと思った。


 そう思った私はコンビニへ向かっていた。

 そのとき……。


「結菜ちゃん‼」


 私の名前を呼ぶ声がした。


 この声は……。


 私は声がする方を見た。