一輝くんとスーパーへ向かっている途中。
一輝くんと並んで歩いている私は、横目でチラッと一輝くんの方を見た。
そしてこんなことを思い出していた。
それは、さっき彩月と夏川さんも一緒にカフェでお茶をしたときのこと。
そのときの彩月と夏川さん。
もちろん恋人同士だから当たり前なのだけど。
とても仲睦まじかった。
私は正直、彩月と夏川さんのことを羨ましく感じた。
なんでこんなにも羨ましく感じるのかはわからない。
だけど無性に羨ましく感じた。
夏川さんは、私と一輝くんのことを恋人同士だと思ったみたいだけど、実際は恋人同士ではない。
確かに一輝くんからは想いを打ち明けられたけど……。
まだ……。
まだ私の気持ちが、はっきりとしないから……。
はっきりとしない……?
本当にそうなのかな……。
私は一輝くんのことを……。
どう思っているのだろう……。
結局、一輝くんに対する気持ちの答えは出ないまま今日という日を終えた。
嫉妬……?
今は昼休み中。
私と彩月は机を囲んで弁当を食べている。
そのとき……。
「ねぇ、結菜」
彩月が私に声をかける。
「なぁに、彩月」
彩月の呼びかけに普通に返事をする、私。
すると……。
「一輝との同居生活はどう?」
「……‼」
彩月の突然の質問に私は動揺したのか、食べていた弁当のおかずを吹き出しそうになった。
「ちょっと結菜、大丈夫?」
心配そうに彩月が私を見つめる。
「う……うん、大丈夫……」
私は、吹き出しそうになった弁当のおかずをなんとか飲み込んだ後、お茶を一口飲んだ。
……びっくりした。
だって彩月が突然そんなことを訊くから。
彩月に一輝くんとの同居生活のことを訊かれて、私の心臓はドクンと妙な音をたてた。
今は一輝くんとの同居生活を訊かれると過剰に反応をしてしまう自分がいる。
別にそんなに過剰に反応しなくてもいいのにと思うのだけど……。
…………。
……ダメ……。
いくらそういうふうに思おうとしても、やっぱり過剰に反応してしまう。
それに……。
なんか……意識してしまう。
一輝くんのことを考えると……胸が……。
ドキドキ……してしまう……。
…………。
ぎゃ……。
「ぎゃぁぁ~‼」
「えっ⁉ ちょっと結菜⁉ 一体どうしたの⁉」
……あ……。
やってしまった。
一輝くんのことを思い出したらドキドキしたり恥ずかしくなってきて、つい叫んでしまった。
「ご……ごめん……彩月……なんでもない……」
私は彩月にそう言うしかなくて……。
「え? なんでもないの? とてもそんな感じには思えないけど」
私のことをまだ心配してくれている彩月。
だよね……あんなふうに突然叫んだら、誰だってびっくりするし心配もするよね……。
「本当に大丈夫。ありがとう、彩月」
私は笑顔を作って彩月にそう言った。
「大丈夫ならいいけど……何か悩みでもあるなら、いつでも私に言ってね。話くらいしか聞けないかもしれないけど……」
やさしくそう言ってくれた、彩月。
「ありがとう、彩月」
彩月は優しいな。
彩月の優しさ、やっぱり姉弟だなって思った。
そういう優しいところ一輝くんとよく似ているから。
「ねぇ、結菜」
「なぁに、彩月」
「さっきから市条くんが結菜のこと呼んでるよ」
彩月にそう言われて、私は教室の戸の方を見た。
すると拓生くんが教室の戸のところで私の名前を呼んでいた。
彩月に言われるまで全然気付かなかった。
最近、私は、よくなぜか自分の世界に入り込んでしまうことがある。
だからなのか、誰かが私のことを呼んでいても気付かないことがある。
「ありがとう、彩月、教えてくれて。じゃあ、ちょっと拓生くんのところに行ってくるね」
私は彩月にそう言って席を立とうとしたとき。