そうして私が、ペットショップの子猫みたいに首を傾げていると、前の席に座っていた森村奏さんが、ひょろりと長い後ろ姿を振り返らせて、私の解説が必要かな?とオタク漫画に出てくる情報通の友達みたいに、頼みもしないのに教えてくれた。
「みんな、中学からの顔見知りなんだ。三年間一緒だったから、どんなことだって知っている。もちろん、あいつが図書委員なんてやるキャラじゃないってことも」
「あそこにいる全員が?」
「あの子たちだけじゃないよ。クラスの半分、とは言わないけど、三分の一はそうなんじゃないかな」
「それは、つまり…」
「附属中学から上がってきた子たち。みんな、林田さんより三年早く、この学校に通っているんだ」
初めて口を聞いたのに物怖じしない、というか誰が相手だろうと自分のペースを崩しそうにない態度に圧倒されながら聞いていた。あぁ、ちなみに私も附属出身だから…さばさばした物言いで分かり切ったことを付け足す姿を見て、くすっと笑った。
つまり、天道くんと彼を取り巻く男子と女子は、中学高校と同じ学校に通っている子、という訳だ。噂に聞いていた、中学受験して私立に行ったちょっと特別な人たちだった。
頭では分かっていたが…高校生のうち半分弱が附属中学出身である、と学校のパンフレットに書いてあったけれど。実際に彼らの姿を見て、私は初めて、自分がそうした学校に入学したのだと知った。
みんな知らない者同士、と勝手に思い込んでいたが、そうじゃない。 ここでうまくやっていけるのかな、と弱い気持ちが胸の中でうごめいた。
「……」
彼らと私は、根本的に違う世界の住人だ。私立中学出身と公立中学出身…そんな小さなことじゃない。天道くんには、他にもたくさん居場所があるだろうけど、あらゆる運動が禁止されてる私には、クラスメート以外の子と知り合うには室内活動が中心の図書委員になるしかなかった。彼には心おきなく高校生活を楽しむ時間があるだろうけど、私には、そうしたものが約束されていない。いつ天の声が掛かって、この学校に通う毎日が断ち切られるか分からない身なのだ。
そう考えたら、さんさんと陽が降り注ぐ窓側の席に座っている姿がますます遠く感じられた。これまではもちろん、これからも、親しくなることはないだろう、と何も始まっていないのに灰色の未来を想像していた。その事実を告げられるまでは…。
「それでは、天道翔くんと林田鈴さんの二人に図書委員をお願いします。いいですね?」
教壇の上から大船先生に高らかに告げられ、天道くんと一緒に、お願いします、とクラスメートに頭を下げる。その瞬間、私は、自分がどんな状況に置かれているかを知って棒立ちになった。
つまり、女子の心を虜にする王朝貴族の天道くんと図書委員の仕事をするってこと?貸出カウンターに座って、もう、何言ってんの、なんて肩を叩く関係になる?
「みんな、中学からの顔見知りなんだ。三年間一緒だったから、どんなことだって知っている。もちろん、あいつが図書委員なんてやるキャラじゃないってことも」
「あそこにいる全員が?」
「あの子たちだけじゃないよ。クラスの半分、とは言わないけど、三分の一はそうなんじゃないかな」
「それは、つまり…」
「附属中学から上がってきた子たち。みんな、林田さんより三年早く、この学校に通っているんだ」
初めて口を聞いたのに物怖じしない、というか誰が相手だろうと自分のペースを崩しそうにない態度に圧倒されながら聞いていた。あぁ、ちなみに私も附属出身だから…さばさばした物言いで分かり切ったことを付け足す姿を見て、くすっと笑った。
つまり、天道くんと彼を取り巻く男子と女子は、中学高校と同じ学校に通っている子、という訳だ。噂に聞いていた、中学受験して私立に行ったちょっと特別な人たちだった。
頭では分かっていたが…高校生のうち半分弱が附属中学出身である、と学校のパンフレットに書いてあったけれど。実際に彼らの姿を見て、私は初めて、自分がそうした学校に入学したのだと知った。
みんな知らない者同士、と勝手に思い込んでいたが、そうじゃない。 ここでうまくやっていけるのかな、と弱い気持ちが胸の中でうごめいた。
「……」
彼らと私は、根本的に違う世界の住人だ。私立中学出身と公立中学出身…そんな小さなことじゃない。天道くんには、他にもたくさん居場所があるだろうけど、あらゆる運動が禁止されてる私には、クラスメート以外の子と知り合うには室内活動が中心の図書委員になるしかなかった。彼には心おきなく高校生活を楽しむ時間があるだろうけど、私には、そうしたものが約束されていない。いつ天の声が掛かって、この学校に通う毎日が断ち切られるか分からない身なのだ。
そう考えたら、さんさんと陽が降り注ぐ窓側の席に座っている姿がますます遠く感じられた。これまではもちろん、これからも、親しくなることはないだろう、と何も始まっていないのに灰色の未来を想像していた。その事実を告げられるまでは…。
「それでは、天道翔くんと林田鈴さんの二人に図書委員をお願いします。いいですね?」
教壇の上から大船先生に高らかに告げられ、天道くんと一緒に、お願いします、とクラスメートに頭を下げる。その瞬間、私は、自分がどんな状況に置かれているかを知って棒立ちになった。
つまり、女子の心を虜にする王朝貴族の天道くんと図書委員の仕事をするってこと?貸出カウンターに座って、もう、何言ってんの、なんて肩を叩く関係になる?