「うん。トマトクッキーって、やっぱりしょっぱいみたい」
やっぱりクッキーだから、甘い方がいいかな。
もちろん無理に食べさせるつもりなんてないから、彼が嫌だと言うならわたしは持って帰るつもりだ。
「でも、俺食うよ?」
まるで当たり前のことを言っているような顔で、綾人は言った。
「え?」
「だって、お前が焼いたクッキー、俺が食わない資格あると思う?」
「その……。必ずしも食べなきゃいけないわけじゃないんだし……」
「俺がどんだけ、お前とお前のクッキーが好きだと思ってんの?」
綾人は急に真顔になって聞いてくるので、わたしは思わず何も言い返せなくなった。
「あっ、あの……」
語尾を失っている間に、手を伸ばしてクッキーをかじる綾人。
「ほら、やっぱ美味いじゃん」
いつもクッキーを食べてくれている時の笑顔で、彼は言った。
「よかった」
わたしも綾人に続いて、クッキーに手を伸ばして食べた。
……赤い生地は、あったかくてやっぱりしょっぱいけど美味しい。
「あ、上手く焼けてる……。でもやっぱり、しょっぱいね」
苦笑いをしてから、わたしは二口目を食べた。
「こういうしょっぱいクッキーも、悪くねぇよ」
「たまにはいいかも」
わたしは、ふっと笑って2枚目のクッキーも食べ始めた。