教科の係の生徒達が、テスト日にもかかわらず先生の雑用を手伝わされていた。一人で持つには不可能ないくつかの段ボールを、積み上げて二人で運んでいる。それでも無理がありそうで、何が入っているかは知らないが一番大きくて重そうな一つを二人で、積み上げている二つを誰かが一つずつ持って運ぶとして、最低でも四人は必要だと時環が感じたときだ。

 生徒達が幸哉の横を通った際、積み上げていた段ボールの二つがバランスを崩した。


「危ないっ!」


 雪崩れ込むそれらを見て、時環は反射的に声をあげたが間に合わない。二つの段ボールは時間を確認しながら歩いている幸哉の頭上に落ちた。

 すり抜けて、床へと落ちた。

 呆然と立ち尽くす時環に、幸哉は時計から顔を上げて振り返る。


「旅行祈では未来から来た者の姿は、過去の人達には見えない、過去の物には何一つ触ることが出来ないんだ。いわば幽霊みたいなものだな。鑑賞面はVIP席だろう?」


 試しに近くにあった消化器に手を近づけた。持ち手にも本体にも触れることが叶わない。


「確かに」


 先に教えて欲しかったと、心の中で悪態をついた。幸哉の頭上に大きな物や、命を脅かすものが倒れ込む光景を時環は見たくない。

 先ほどのように間に合わず、何も出来なかったとき、時環は幸哉を助けられなかったことになる。幸哉は時環を助けてくれたというのに、時環は幸哉を助けられない。

 それが時環にとってどれだけ苦しいか、幸哉は知らない。