「学校に決まってるだろ。真相を知りがてら、視線に慣れに行こう」


 許されないことを、当たり前に出来ることだと思っているような口ぶりに、部外者は足を踏み入れられないのだと告げるべきか時環は戸惑った。


「幸哉さ――」


 意を決して口を開いたとき、戻ってきた幸哉によってそれは机の上に置かれる。


「丁度試作を試して見たかったんだ」


 ゴトリと小さな音を立てて視界に現れたそれは、見覚えのある針の懐中時計。黄色い星と青で表された流れ星のチャームが付けられている。


「旅行キ?」


 箱には入っていないため、どの旅行キなのかは区別がつかない。


「過去を見に行くだけの旅行キだ。これは俺が作った試作品。お前は本物を使ったことはあるだろ。わざわざ働いてまで手に入れたんだから」


 つまりは旅行祈。


「……実は、まだ使ってない」

「マジ?」

「まじ。未だに玄関先に飾られてる。どうにも父さんと母さんにとって旅行祈っていうのは手が出しにくい物みたいなんだ。俺が何年も放置しているクローゼットの奥と同じだね」


 永遠に使われず、祀られ続けるのではないか。刻間夫婦のことを想像すると、あり得ることだと幸哉は今更ながらに感じた。