時環が中学の頃、幸哉は教員免許を取るために教育実習をしていた。だが結局大学を卒業した後に教員にはならず、時計店を手伝っている。以前は店を継ぐまでどこかで働く気でいたそうだが、人の心はいとも簡単に変わってしまった。


「じゃあ、先生達が突然探知機を導入した理由は想像出来る?」


 時環にとって幸哉は変わらず先生だ。先生の心は先生の言葉が参考になる。半分以上は先生など関係なく、幸哉自身の想像力を期待して。


「二日目からっていうなら、一日目に何かあったか、前々から準備はしていたが一日目に間に合わなかったかのどちらか。理由まではなんとも。予算に余裕が出来た故の、気まぐれの提案かもしれない」

「だよな。別に、どんな事情があるにしてもこの先探知機を使うことに変わりはないだろうし。考えるだけ無駄か」


 テストへの取り組み方や勉強面について考える方が有意義だ。時環の点数ではなおのこと。だが幸哉の興味は時環の話の方に移っていた。


「そうでもない。物事に対して疑問を抱き、興味を持つのは大切なことだ。幸いお前の問題と同時に解決出来そうだし、ちょっと調べに行くか」

「どこに?」


 立ち上がった幸哉を見上げながら時環は聞いた。幸哉はさも当然のように答える。