「どうしても我慢できなくて。一応休み時間には行ってたんだよ?」


 眠気覚ましに缶コーヒーを飲んだのが間違いだ。コーヒーに含まれるカフェインには利尿作用がある。


「そのトイレに行く前と帰ってきたときに、二日目は金属探知機を使われたの。ポケットにスマホを入れていたら置いて行きなさいって。イケメン教師だったから後で女子に羨ましがられた」

「疑われたいのか女子達は」

「手間が増える分、相手に宿るのは好感度ではなくヘイトの方だろうにね」


 大人は面倒な子供を好まない。時環はそう信じて疑わない。対しては幸哉は。


「夢を抱くだけ無駄なのにな……。教師と生徒は、結ばれるべきじゃない」


 時環のように女子生徒のことを考えた言葉を表したが、目は口ほどに物を言う。細められた目から、言葉には他の意味があるように感じられる。まるで、自分に言い聞かせているような。


「幸哉さん?」


 意識が遠い過去のどこかに向けられているよう。時環は幸哉を呼び戻そうと声をかけたが幸哉は顔に表さず、いつの間にか自然と戻ってきた。


「で、まさかトイレに行く生徒が続出して最初に言い出したお前が怒られて」

「ないよ。注意はされたけど……。俺が注目してほしかったのは金属探知機の方。変だと思わない?」

「何が」