「別に怒られやしないだろう。点数だけなら酷いものだが、平均点の前後は取れてるし。多分成績もそこまで悪くはつかない……と思う、多分。これまでの成績を考慮すれば真ん中か、中の上か、国語と数学だけ中の下かもな。お前、文系と理系のどっち?」
「どっちだろう」
文系と理系の両方得意科目があり、両方に苦手科目がある。数学は苦手だが生物や科学はそこそこ。世界史は得意だが日本史はあまり。国語と英語は内容によって様々。得意とも苦手とも言えないのが副教科全般だ。
「両刀か」
受験には不利で、最も損をしている。誰にも負けない一つの科目を持つことが成績では大きく有利だ。
「とりあえず間違えた箇所の直しをして、国数英の復習と不得意分野を集中的に固めよう。何か希望とか困ってるところとかないか?」
「……今の勉強体制のことでなくてもいい?」
「ん? どうした?」
「テストに落ち着いて取り組める方法が知りたい」
わざわざ前置きをして聞いてくることから、てっきり人間関係のような複雑な悩みでも抱えているのかと幸哉は思ったが、そうではないようで安心した。普通の環境に置かれたとはいえ、幸哉の中で小学生の頃の時環の面影は完全には消え去っていない。
特に心の傷は完治することがなく、何かの出来事がきっかけで簡単に傷口が開いてしまっても不思議ではないのだ。