腰はソファーに降ろしているというのに、刻間時環の心は床に正座をしているような気分だった。

 一枚の紙を眺めている目の前の青年に目を向けることが怖くて、顔を上げることが出来ない。

 青年は怒ってこそはいないが僅かに目を細め、なんとも微妙な心境を抱えている。


「んー……こりゃあ酷い。お世辞にも良い点数とは言えないな」

「知ってる」

「慰めの言葉すら思い浮かばない」

「反省はしてるので傷を抉るのはやめてもらえる!? 分かってるし勉強に付き合ってもらった幸哉さんには申し訳ないと思ってるよ! あー……家に帰るのが怖い」


 元より勉強が得意とまではいかない時環は高校に上がってからというもの、格段に難しくなった勉強内容についていけず、実力はテストで再び明らかにされた。

 以前は見逃してもらえたが、幸哉先生の世話になった以上は両親も何を言うか分からない。家に帰らず時計店に寄り道をして誰よりも先に幸哉に見せたのは、点数への客観的反応を知りたいのと、最も見せたくない相手に見せるのを少しでも先送りにするためだ。そんなことをしたとして、時間が止まることなどないというのに。

 嫌なことは早々に終わらせるべき。