『これの中身って旅行キだったりする?』
『違うけど、なんで?』
『いや、別に過去に戻りたいとか思ってないけど、もし配達中に心から過去に戻りたいとか望んだら、旅行キの力が発動して使い物にならなくなるんじゃないかって思って』
『ああ……それなら大丈夫だ。専用の箱がロックの代わりになっていて、箱から出して初めて旅行キは手続きを済ませた持ち主のために力を発揮する』
『なんだ、そうなんだ』
『それはただのアナログ時計。いつもは修理の頼まれることの方が圧倒的に多いんだが、珍しくも時計本体のご注文だ。替えがきくとしても、くれぐれも大事に。無くしたりしないようにな』
「誰が無くすかっての」
ポケットが破れても、この大きさならば落として直ぐに気付けるはすだ。再び仕舞うと長財布とは比にならない存在感を感じた。