「おはようユキ君、今日も朝早くからお疲れー。モーニング一つ」
「刻間さん……! いつもありがとうございます」
カウンター席のみの小さなカフェ空間は、一度この店を訪れてコーヒーや食事を口にした客が数日おきに朝食や昼食をしに来たいと思う程には密かな人気がある。
常連客を生み出すその理由が幸哉の淹れるコーヒーと作る食事にあると、気付いていないのは本人だけだ。ただの冷水に見えて少し果実が加えられたこだわりのあるお冷やも、訪れるお客にとっは目的の料理やコーヒーが来るまでの楽しみとなっている。
「今日は親父さんはいないのかい?」
「昨日遅くまで時計をいじってまして、今頃夢の世界に戻ってますよ」
「ははっ、相変わらずだなトムさんは! ユキ君ももう何年かすればああなるのかねー」
「どうでしょう……。個人的にはなりたくないですね。少なくとも俺は、十二時には布団に入る生活を習慣づけたいと――っとと、思ってます」
冷蔵庫から取り出した卵を考えなしに作業台の上に置けば、コロコロ転がって床へと向かった。落下を阻止して落ちないよう小皿の上に乗せると、安心して料理を再開する。
「大抵の子供は皆、親に似るのを嫌がるものなんだよ。でもユキ君の場合、尊敬はしているんだろ?」
「そう見えますか?」
「否定しないところ正解だな。ユキ君は間違いに対しては直ぐに指摘する」