「過去の自分自身に戻ることが出来れば、同じ人間が同じ時間軸に存在することはない。自分の意志を落とさないという選択に変えるだけでいいのに、旅行記はそれが出来ない」

「そういうこと。わざわざ止める必要がある分、難易度が上がる。自分自身やその関係者との接触に気をつけながら、他人と化している自分をサポートし操り、未来を変えるなんて並大抵のことじゃない。一回目の親ガチャはともかく、運がよかったよお前は」


 時環が旅行記で未来を変えられたのは、過去の時環がまともに動ける状態でなかったから。未来を変えるために行動が必要であったのは、過去の刻環ではなく第三者の協力。


「もし父さんがお前に渡した時計が旅行記ではなくこの旅行機だったら、お前の未来は変わらずに今頃どうなっていたか分からない。今、ここにはいなかったかもしれない」


 あり得た可能性の未来を想像し、時環の顔が強張った。

 幸哉は改めて旅行記が入った緑色の箱を掴み、旅行記とはどういうものなのか、要点を押さえた一言でまとめ上げる。


「旅行記は過去を見に行くことができ、未来を変えるチャンスを与えてくれる」