「緑の箱の旅行記は過去に戻れる。青い箱の旅行祈は過去を見れるってのは、なんとなく知ってる」
「そうだ、そしてこの赤い箱に収められている旅行機。これも過去に戻る力がある」
「緑の箱の旅行記とはどう違うの?」
幸哉は緑の箱を掴み、発音では区別がつかない三つの旅行キのどれについて語るのか名称を示した。
「旅行記は過去に戻ることが出来るが、正確に言えばこの旅行祈と同じで過去を見に行くことが出来る」
「どういうこと?」
「お前はあの日、確かに過去に戻った。でもその時間軸のお前は存在していた。あの時間、トキワという人間は二人いたってことだ。その時間軸のお前と、未来から来たお前。つまり、お前は過去に戻ったのではなく、自分の過去を見に行っていたってこと。あの時間軸のお前は動ける状態じゃなかったから例外だが、過去を変えるには過去の自分が動かなくてはならない」
幸哉は立ち上がってカウンターの裏からガラスのコップを一つ持ってくる。何かを飲むわけではなく、それを椅子の外に突き出して手から離した。柔らかな絨毯の床の上で小さく音を立てて転がる。幸い割れてはなさそうだ。