遊び心で取り組んでいると誤解されたのではないかと、時環は少しばかり焦った。その様子を見て幸哉は面白おかしそうに笑い、特に怒っていることはないと時環に示す。
「助かるっ。じゃあ、掃除が終わったら一階に降りてきてくれ。配達は午後だから、急がなくていい」
「うん」
「昼食は食べてから行けよ。今日の賄いはカレードリアな」
時環は誰が見ても顔に出やすく分かりやすい。本人は隠せているつもりだろうが、喜びの感情はしっかりと表に表れていた。この店で働く醍醐味は賄いではないかと思うくらい、時環は幸哉の料理が好きだ。それは階段を降りながら時環の顔を思い出して笑っている幸哉にも伝わっている。
先に待っている楽しみに気分を上昇させながら、時環は手を抜かずに隅々まで綺麗にした。壁に掛けられている鳩時計の埃を脚立に上って拭い去ると、二階の掃除は一段落だ。流石は時計屋敷……否、時計店。想像以上の時計の多さに思いの他時間を費やした。