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福沢時計店の仕事は主に副業で行っている喫茶店がメインである。
時計店としての仕事は値段の高さ故に多くはなく、買い手は数ヶ月に一度程度しか現れない、まさに火の車だ。時計の修理の注文とカフェの営業がなければとうに終わっているだろう。
アルバイトとしての時環の仕事も必然的に喫茶店業務となり、二階の廊下で掃除機を走らせていた。喫茶店は一階、二階は幸哉と斗夢のプライベート空間。これはただの家事ではないだろうか。
時環は疑問に思ったが、自分はただの雇われ人であり、雇用者の指示に従うだけだと深く考えないことにした。一階の仕事は刻間が来たときに誤魔化すことが難しく、バイトを秘密にしている以上、二階で勉強をしているということにした方が幸哉や斗夢にとっても都合がいいのだから。
ノズルを外して壁と古時計の隙間に延長管を差し込んでいると、途端に人の気配がした。上ってくる足音は掃除機の音でかき消されても、すっかり馴染み深いものとなった特有のオーラは健在らしい。
「なあ時環、お前ってお使いしたことある?」