「幸哉さん、斗夢さん!」
家にも帰らずに、時計店に寄り道をした時環が勢いよく扉を開けた。「見て!」と時環が突きつける白い紙には努力の成果の点数が記されている。幸哉はそれを手にした途端に顔をしかめ、そんな幸哉を見た斗夢は彼の手元に覗き込んだ。
「おおー」
「マジか……」
斗夢が関心している横で、幸哉は苦笑を浮かべていた。教え子には褒めてやりたいし、褒めなくてはならないのだが、家計のことを思うと素直に喜べない。先生が顔をしかめていても時環は特に気にしない。
「約束通り、ここで働かせてください」
期待に満ちた笑顔を見せられれば反対の言葉など幸哉には言えない。微笑ましく頷く父の横で頭を抱えるも、仕方がないと開き直る。特に勝負をしていたわけではないが、敗者は敗者らしく負けを認めよう。
「休日にな」
世の中諦めが肝心だ。