幸哉は真面目に取り組もうとしている少年に向かい合うと、家計の未来を頭の隅に追いやって心を切り替えた。分からない問題に直面していたというのに幸哉の移動時間も惜しいのか、時環は他の問題に手をつけ始めていた。つい先ほどまでとは大違いだ。
「こんな宿題は一日で終わらせるよ!」
「唐突にやる気を出しやがって……」
まあ一学期の中間とはいえ、五教科全て八十五点というのはそこそこ難しいだろう。ゴールデンウィーク中に少し勉強をした程度であれば、せいぜい六十点から七十点、暗記物でギリ八十点。そのあたりが妥当だろう。
さほど深刻に考えず、自分の持てる技量を尽くして幸哉は時環の教師を務めた。
意気込み通りにゴールデンウィークの敵を一日で片付け、クーラーの効いた時計店の一階で勉強に明け暮れる毎日。
連休が明けると、時環は中間テストを、幸哉は教育実習の期間に入る。それぞれが自分のことで手一杯になり、幸哉が時環のテストのことを忘れかけてしまった頃。
結果は返ってきた。