勉強の計画表とは桁違いのエネルギーが蓄えられたその目標を手にし、時環は意気込む。幸哉はやる気に満ちたその姿を見ると、下手に損なうことは言えなかった。コーヒーを淹れに行く斗夢を追いかけて、小声で耳打ちした。


「父さん、旅行祈の金額分って何年アイツを働かせる気だ。報酬を渡すときには不要になってるかもしれねーだろ」


 珍しくもインスタントコーヒーを淹れて、スプーンでかき混ぜている斗夢は幸哉の言葉の意味が分からないフリをする。偽りの日数を自分の中で正当化した。


「何年? 一日から数日で十分だろう」

「ふざけるな。旅行祈ひとつの原価は――」

「作った本人が良いと言っているんだ。お前は気にしなくていい」

「気にしなくてって、家計費が……」


 人を雇う必要もなければ余裕もない。我が家の収入を揺るがす過剰なサービスは父親の方が上ではないだろうか。

 幸哉は盛大なため息と吐くと同時に酷い頭痛に襲われた。恐らく精神的なものだ。赤の他人、ましてや子供、父親の親切を受け入れただけの時環はこの内心を知る必要はない。


「幸哉さん! この問題教えて!」

「今行く……」


 時環が良い点数を取らなければいいだけの話だが、福沢家のために一人の少年の将来の足枷になる真似はしたくない。そもそも刻間から講師としての給料を貰う以上、これは立派な仕事だ。手を抜くことは許されない。