撫でた分だけ返ってきた罰ではない。夢のない現実を告げた罰だ。


「痛ってぇぇっ! 何しやがんだ父さん!」

「買えるんだよな? 数ヶ月や一年、二年も働く必要なく」

「はあ? 最低賃金で働くとして、材料費的に考えて最低でも――」


 再度周囲に拳の音が響いた。ピュアな心を忘れた罰だ。


「ってて……」

「はぁ……息子もここまで純粋な子だったら……。時環くん」

「はい」


 頭を押さえる息子のことなどお構いなしに斗夢は提案する。


「今度の中間考査で五教科全てにおいて八十五点以上を取れたら、ウチでアルバイトをしたらいい」

「本当!?」


 差し伸べられた心の手を即座に掴みたい衝動に駆られるが、「あっ……」と幸哉の言葉を思い出した。


「でも、中学生は雇っちゃ駄目なんですよね……」

「お金を払うことが駄目なんだ。報酬をお金じゃなくて、物品で渡せば問題ないさ。時環くんは旅行祈が欲しいんだろう? 旅行祈の金額分を働いてもらい、報酬は旅行祈その物で支払う。これでどうだ?」


 問題が片付けば、断る必要性は全くない。


「やります! やらせてください」