「三年になっていきなり勉強する癖が身に付くわけないだろう。内申にだって響くし、何より勉強は積み木だ。数学は特に」
「積み木……」
「過去に習った内容を活用して解く問題をこれから沢山習うからね。そのときに過去の内容が理解出来ていなければ解けないだろう? コツコツ勉強して積み上げていくんだよ」
出来る単元が増えれば増えるほど、この先学ぶ内容がより簡単に感じることが出来る。高難易度の問題と対峙して、倒すために必要な武器が未入手の状態では長い道のりにやる気が削がれるものだ。強い敵には序盤から少しずつレベルを上げて、きちんと装備を手にしてから挑むもの。
「受験はもう始まってるってことか」
「そういうこと。お前もこれから実感するだろうけど、十年はあっという間に感じるんだ。三年なんて一瞬。一年はそれよりも早い。のんびりしていたら、後悔した頃には取り返しがつかなくなっている」
「幸哉さんみたいに?」
「俺は苦労も後悔もしていない」
主に斗夢が、勉強を強制的にさせてくれたおかげである。