ぶっきらぼうに両目を細め、疑心の眼差しを向ける幸哉に気付いていないフリでもしているのだろうか、息子の方に顔を向けなかった。
「中学一年の数学か。コイツの勉強を見てやったのが懐かしいな」
「幸哉さんの先生は斗夢さんだったんですね」
「ああ。家庭科の成績だけ無駄に良くて、数学の方は勉強をする姿勢すら見せなくてね。よく無理矢理させたものだ」
「へー……」
「何か言いたげな目でこっちを見るな」
自分は勉強しなかったのに人にはさせるんだ。と時環は言いたいのだろう。自分がさせられたからこそ人にもさせるのだと、幸哉は視線で言い返した。
「ははっ。時環くんもコイツに教わるのは不服だろうが、我慢してやってくれ。自分が受験のときに苦労をした分、テスト対策の知識も無駄に身についている」
「無駄じゃねーだろ無駄じゃ。将来に繋がる素晴らしい知識だ」
「幸哉さんも斗夢さんも、やたらとテストに拘るけどさ、一、二年のテストってそんなに大事? 三年だけ頑張ればよくない?」
一年の初めから三年の最後まで頑張るよりも、三年生の一年間だけを我慢して集中したい。実際にその通りに出来るかどうかの確証はなく、サボり魔の戯れ言だ。