思い返しても、ビールの味は指で一舐めする程度の楽しみ方で十分だ。

 飲み会では幸哉はソフトドリンクを注文するが、周りが酒を頼んでいる中フルーツ系は頼みづらく、炭酸ならそれのアルコール入りとパッと見の区別がつかないため、大学に行ってからは炭酸を飲む機会も増えたのだという。


 家で嗜む炭酸といえば炭酸水であったが、ラムネのような味のある炭酸ジュースの美味しさに気付けたのは学校生活の影響だ。この先社会に出たときのことを考えると多少は酒に慣れておきたいところだが、そんな日が無事に訪れるのかどうか、本人も想像がつかない。


「大学の仲間と飲み会かー。そうだよな、幸哉さんもう四年生だもんな。教育実習いつからだっけ?」

「休み明け」

「マジ!? 俺の先生、もうすぐ現役教師かよ!」

「そうだ。期間限定だけどな。悪い点数を取ったらシバく」

「うげぇ……」


少しでも勉強の再開時間をずらそうと、時環はかき氷をゆっくり食べようと考えたが、氷は時の流れに比例して徐々に溶け出す。時間は待ってはくれないらしい。