身体を起こした時環は別添えのシロップを少量注ぎ、紙ストローで程よく混ぜてから手に持った。グラスは水滴で塗れていて中の氷がもたらす冷たさが心地いい。一口運ぶとすっかり飲み慣れてしまったコーヒーの味とレモン酸味、シロップの甘みが同時に広がる。


 福沢時計店が提供しているコーヒーは店主の好みにより細挽きで、酸味の強い粗挽きを好む時環は毎回レモンも希望していた。今では何も言わずとも、こうして初めからコーヒーの中に入れてくれている。飲み終わった最後に残りのシロップをかけて食べるのもいつものことだ。

 時環がコーヒーを一気飲みをしている目の前では、幸哉が腰掛けて先ほどまで時環が解いていた数学プリントに目を通していた。まだ全ては終わっていないため出来ている分のチェックだが、さほど酷い出来ではなさそうで一安心する。


「中間テストがある以上、諦めるんだな。中間が終わったら直ぐに期末もやってくる。夏休み明けには実力テスト。学生の本分は勉強というわけだ。高校受験に備えて一年の今からきっちり勉強しておかないと後で困るぞ? そもそもバイトをするにしたって、中学生はどこも雇ってくれないよ」

「新聞配達は小学生でもいいって聞いた」

「だーめ」

「知ってる。つかアンタは俺の親か」

「親じゃなくて休日限定の先生な、お前専用の。ここ間違ってるぞ、自然数とはマイナスなんて余計な物が付かず、分数みたいな中途半場なものでもない数えることが出来る数。ゼロは何もないってことだから、数えられないだろ? つまり自然数ではなくて――」