あの出来事があって以来、トキワは何度かこの店を訪れた。遠慮がちな彼は積極的に注文をする方ではなく、やはりというべきか里親と一緒でない一人の今日は、自分が稼いだわけではない財布の中身を気にかけて食事やデザートの注文をしない。


 幸哉がカウンター席に座る彼に百パーセントのオレンジジュースとサービスのヨーグルトケーキを差し出すと、分かりやすく喜びのオーラを醸しだす。何歳になってもケーキが好きな部分は変わらないらしい。


「最近の学校はどうだ?」


 すっかりと食に夢中になっている少年を眺めながら幸哉は問いかけた。

 五年前のトキワなら無言でケーキを食べ続けていたが、今はケーキよりも幸哉の問いに答える方を優先出来るようになっている。見られながら食べるのも、気付いてしまえば落ち着かないものだ。