5
日は間もなく暮れようとしている。
つい数十分前まで青色であった空はいつの間にかダークグレーへと姿を変えていた。その色が黒に変わるまでそう時間はないだろう。沈み始めた日はあっという間に底へと落ちる。
「買い物……明日で……いいや」
当初の目的を果たせずに帰宅することに戸惑いはあったが、今日の食事は十分にとった。イレギュラーな一日であったこともあり、少年は息を切らしながら壁に手をついて自身の甘えを許す。
身体は正直だった。時計店を出たときよりもずっと重たく、この突然の変化は何だろうと感情に不安を生じさせる。いくら日が沈んでいるとはいえ、気温も変わりすぎではないだろうか。寒さなど欠片も感じなかったのに、今はゾクゾクと震えが生じている。平衡感覚が狂い、足を一歩前に出すのにも少年は苦しんでいた。
――やっぱり……一緒に来て貰えば……よか――っ。
そう思ったところで、消し去るように首を振った。
大人は怖い生き物だ。見知らぬ他人なんて信用出来ない。信用出来るのは家族だけ。誰も……誰も助けてはくれない。