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「……それで、家の場所が分からないから誘拐してきたと?」
「誰が誘拐犯だ、保護と言え保護と。もしくは招待!」
相変わらず閑古鳥が鳴いている店でよかった。誤解を与えてしまえば通報案件になりかねない。
いつもカウンターの向こうにいる幸哉も、客が来ない間は席に座って父とのコミュニケーションを交わしている。今は隣でチーズケーキを食べている小さな客がいるがノーカウントだ。まるで初めて食べたと言わんばかりに幸せそうに頬張るこの少年は、自分のことを話題にされているとは考えもしていないか、ケーキに夢中で気付いていないのだろう。
「つか、本人はもう道分かるって言ってるし……。本当に分かるんだよな? 二丁目って言うから連れてきたけど、ここから一人で帰れるんだよな?」
コクリと頷くその姿は、不安しか抱かせず安心感は生じなかった。念のため帰りは送って行こうかと、一度拾った身として幸哉は考える。それはそれで通報されそうだなと思い、オマケの親切思考は直ぐに打ち消した。
「警察に行かず、連れてきた時点で立派な誘拐じゃないか。親御さんに連絡は?」