燃やすと幸せになれると囁きかけ、星の紙に住所と名前を書かせる手口。燃やすのは自分自身ではなく彼らが回収して行うそうだ。実際に燃やされているかどうか確かめる術はない。十中八九嘘だろう。
本音を言えば幸哉は欠片も関わりたくなく、今すぐその場から離れたかった。だが被害に遭っている者が騙されやすいお年寄りや、物理的抵抗力の低い子供となれば見捨てるには罪悪感が大きすぎる。
一瞬だけ考えて、手遅れになる前にと足が進んでいた。男の子の持つ星の紙をひったくり、険しい顔を女性の方へと向ける。
「アンタ! 何書かせようとしてんだ! 個人情報保護法違反で警察呼ぶぞクソ野郎―!」
男の子に向けての叫びではなかったのだが、女性よりも怯えさせてしまった。ただ声に驚いただけだ。そうであってほしい。
「私はただ、この子に……」
「『何か悩みがあるんじゃないですか? ここに君のお名前と住んでいるところを書いてくれる? 燃やすと神様に届いて幸せになれるんだよ? おばさんが後で燃やしといてあげるからさ』……だろ?」
「ヒィ!」
「友人がアンタみたいな奴に絡まれて困ったって、休み時間に言ってたんだよ! とっとと失せろ!」
相手が女性で良かったと内心思う。男性であれば喧嘩になって、本当に警察のお世話になっていたかもしれない。