大陽の光は雲に隠れていて、眩しすぎず暖かい。一人でなければ昼寝をしたかったと思わずにはいられない自然の環境は日々の疲れを癒やすに相応しく、父からの労働の対価として無理矢理置き換えることが出来た。
立てた膝と、荷物を通した腕を枕に眼を瞑った。暗闇の中、意識は耳の方に大きく集中し、小鳥のさえずりや虫の鳴き声の他に耳障りな人の声まで聞こえてくる。
「そう、ここに――を書いて……」
「――しょ?」
「――う、――預かって――」
――ん?
途切れ途切れに聞こえた女性と少年のような声は、まともに内容が理解出来るものではない。しかし幸哉の直感が嫌な気配を感じ取った。一度気になってしまえば確認をせざるを得ない。怪訝な顔で声の方向を振り返り、目にしたものは、普通なら逃げたい衝動に駆られるいかにも怪しい光景だった。
「ちょっ! おいおい……」
二人の人間が、どちらもヤクザのような背格好であれば自分が走って逃げるだけだった。だが視界に映るのは、五十代くらいの女性が小学生くらいの小さな男の子に、星形の小さな紙とペンを差し出して何かを書かせようとしている図。
ここ最近、学校でも何度か警告されていたことを思い出す。高校のくせに外部の人間が自由に出入りが出来る食堂で宗教勧誘が多発していること。