「未来がそう……易々と変えられるものだと……思うなよ……。そもそも過去なんて……本来戻れるものでも……戻っていいものでも、ない」


 どんなに失敗しても、未来を向いて歩く。そんな人生だから人は時間を大切にし、大切にしなくてはならない。それでも後悔して、どうしようもなくて、生きられなくなるくらいに絶えられなくなったとき、後ろを向くことを許して欲しいと望む。

 生きている時環に、今はもう生きられる時環に旅行機は必要ない。どの時間の幸哉も、時環が旅行機を使うことを許さない。


「今を大事にしろ……時環」


 その一言を最後に、幸哉は完全に意識を手放した。


 そうだ。

 今を変えることは出来ない。

 時環はあがいても、幸哉に勝てなかった。

 それで負けを認めて、諦めて帰るのか。


「ふざけるなよ……」


 助けられなかった。

 それは今のことだ。

 未来は違う。


「アンタがどれだけ拒んだって、俺はアンタを助ける! だから、絶対に死ぬなよ!」


 駆けつけた救急隊の人達と入れ替わるように、時環はその場から離れた。