冷たい目を浴びせられるのを覚悟して、ゆっくりと顔を上げた。

 怒っているわけでも、困った顔をしているわけでもなく、いつも通りの笑みを斗夢は浮かべていた。


「大きくなったね」


 一瞬、何のことだか時環は分からなかった。未来から来たことがバレたのかと思ったが、バレる要素はない。


「中学生……ですから?」


 疑問形は戸惑いからだ。斗夢は変わらず笑顔を向けていた。


「構わないよ。アイツのことだ、見られて恥ずかしいほどの汚い部屋でもないだろう。好きに遊んで来なさい」

「いいんですか!?」

「ああ。私が許そう。ただし……」


 立ち入り禁止の理由が部屋の美しさということに驚いていた時環だが、続けられた斗夢の言葉に意識は持って行かれた。


「帰る前に、この時間軸の幸哉にきちんと会いに来なさい。いいね?」


 彼は、気付いている。


「斗夢さん……」

「私は何も聞かないし、何も言う気はない。全ては君次第だ。だが、君の行動が大事な息子のためになるというのなら、手助けくらいはしてあげたいと思う。だから一つだけ教えてくれないか? 君は幸哉のために、今ここにいるのかい?」