自分に彼女の行動を制限する権利などないというのに、口から零れ出た。

 教室で断ってしまった手前、他の男を誘っていなければの話だ。


「想い人がいるのに期待させるような真似をして、男が可哀想だ」


 彼女からしてみればそんなこと、自分に想いを寄せていない時環には関係のないこと。苛立たれてもおかしくない。


「人として好きなんだって、二度目は言わないんだね」

「過去がそうでなかったから、否定ばかりは出来ないんだよ」


 いつからその対象が尊敬と憧れに変わったのか、彼女は語らなかった。

 子供が遊ぶ楽しげな声を聞きながら、のどかなそよ風が吹く。確かにこの風は、理由もなくこの付近に留まりたくなる。


「……もし私が過去に戻れたら、過去をやり直して今を変える。でも過去には戻れないから、前に進むしかないの。時計の針が止まったとしても、時間は動き続けるんだから」


 彼女はこの世の中で過去をやり直せることを知らない。

 不思議と彼女に聞かなきゃいけない気がした。


「過去に戻りたいの?」


 戻れるなら、戻りたいか。その対価に恐ろしい金銭が発生する以上、現実的な話ではないが、話すだけならタダである。