「あっそういえば私、友達に理想の男性のタイプを聞かれて刻間くんの名前を出したよ」

「それ本人に言う? 勘違いされるよ?」

「勘違いした?」

「全然。夏目さんと今日ここで会話をせずに、学校でいきなり言われたりしたら勘違いしたかもしれない」


 既に聞いていたため実際に驚くことはなかったが、直接言われたことには内心驚いていた。

 想いを寄せている男であれば、即告白なんて事態にもなり得るのではないか。そして誤解だと分かり、恥をかく。彼女は本気で何も思っていないから言えるのだ。先生が相手なら心の内で想うか、自分自身の想いを否定し続ける。


「……なんだかね、刻間くんって似ているんだよね」

「誰に?」

「先生に。香りが似ている」


 コーヒーの香り。

 時環と一緒にいることで思い出した。だから今、話したのだろう。

 自ら発していても、彼女は気付かない。

 理想のタイプが先生だと、無意識にこぼしている。


「あと、昔落とし物を届けてくれた同じ中学の人に。同一人物だったりしない?」

「何中?」

「西中出身」

「俺は北中だから別人だ。夏目さんさ、合コン行くのやめなよ。俺も行かないから、人数は男女ピッタリの数になる」