「何か、問題があると言われたんですか?」
「いいや。正式にはまだ認定されていないが、多分審議は通るだろうと向こうの人も言ってくれた。喜ばしいことなのに、いざそう告げられると本当に大丈夫なのかと不安が生じてきたんだ。迎えるのは実の子供ではなく、親の愛を知らないか、多くは知らない他人の子供。親として受け入れてもらえず、上手くやっていけなかったらどうしようか……そんなことばかり考えてしまう。子育て経験でもあれば、少しは前向きになれたんだろうが……」
きっと、そんな心情は奥さんには隠しているのだろう。今更引き下がることも出来ず、一人で自分自身と戦っている。彼自身や彼の家庭に問題があるようなら審議は通らないだろうし、子供に対する愛情を忘れないのであれば堂々と自信を持てばいい。それが出来ないのは彼が真面目過ぎるからであろうか。
幸哉からしてみれば、刻間夫婦の息子、娘になる子供は楽しく生きていける気しかしない。
「固くなりすぎですよ。子供がいなくて子育て経験がある人なんて一握りですし、刻間さんだって親戚のお子さんを預かったりしていたでしょ? 完全な未経験ではないじゃないですか。現状子供がいる家だと自分の子供と他人の子供を比べてしまう危険もある、その可能性の方が相談所の人達も不安に感じると思うんです。愛情と育てられる金銭的余裕さえあれば、大丈夫だと俺は思いますけど」