「モーニング一点で五百五十円。間に合うか?」

「時計持ってきたんだけど、壊れてさ」


 即座に時間を教えてくれるのはスマートフォンだ。電源ボタンを一度押すと、パスを入力せずとも画面上に大きく時間を映してくれる。正確な時間表示はありがたいものだが、希望を持たせず現実を突きつける正確さは、時と場合によれば残酷だ。


「ギリギリ大丈夫」

「馬鹿。スマホじゃテスト中に時間が見れないだろ。顔を上げて時計を見るの、未だに苦手なくせに」

「流石に慣れたよ。レシートはいらない」


 貰って家で捨てることを忘れると、財布の中に直ぐに溜まる。それだけ買い物をしているということだ。


「ん」

「だからいらない――」

「違くて弁当! どうせ今日もコンビニ飯なんだろ? たまにはまともな物を食え」


 時環は昼食代を貰っているが、学食の列に並ぶのが面倒でコンビニで済ませることが多いと前に話していた。テスト日の今日は確実にコンビニだろう。

 ありがたくも押しつけられたそれはいつ作ったのか。時環が朝食に手をつけている短い時間だ。目の前で繰り広げられた調理風景がいつもの新メニューの考案だと思っていた時環は、あれが自分のためのものだったとは考えもしなかった。

 驚きで見開かれた目で、腕の中に収まる昼食を見つめる。


「幸哉さんさ、過剰なサービスで店を潰しちゃ駄目だよ?」

「返してくれてもいいんだぞ?」

「うそうそ! ありがたく頂きます。洗ってから返します。じゃあ!」

「時環!」